COLUMN

コラム

おすすめの本:推し、燃ゆ

第35回目のおすすめの本を紹介していただくのはエンジニアのHSさんです(入社1年目)

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お疲れ様です。東京勤務エンジニアのHSです。

私は半年ほど前までは本というと技術書か実用書くらいしか読むことがなく、小説に触れる機会は滅多にありませんでした。
しかし、半年前にある小説を読んでからは小説も面白いじゃん!と思うようになりました。

今回はそんなきっかけをくれた一冊「推し、燃ゆ」(著者:宇佐見りん)をご紹介したいと思います。
芥川賞受賞作品なので、ご存知の方も多いかなと思います。

●あらすじ

「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい」
この印象的な書き出しで始まる本作品は、推しであるアイドルを生きがいとする女子高生あかりの生活が、推しの炎上によって徐々に変わっていく様が描かれています。
また、アイドルとファンの関係性の裏側で、あかりと家族との関係性にも焦点が当てられており、こちらも本作のポイントかなと思います。

●あかりにとっての推し

「推し」という言葉は元はアイドルファン界隈で使われるようになった言葉(出典:Wikipedia)ですが、最近では様々な対象に用いられるようになってきました。

その影響か、人それぞれ定義も曖昧な言葉になっているように感じます。
私は、「好き」よりも重く、より上位の特別な感情というなんとなくの認識でしたが、あかりの推しに対する姿勢がまさにそれを体現しているなと感じました。

あかりは普段、家族関係も学校生活もままならず、生きづらさを感じていました。そんな毎日の中で推しに出会い、SNSでのファン同士の繋がりを広げ、推しを中心に世界が回り始めました。

そんなあかりは推しを「背骨」と表現しますが、この表現が個人的に好きでしっくりくるなと感じています。(また、ネタバレなので深くは話しませんが、文学作品としてもこの表現が活きてくる点は流石!)
そんな重い感情を注いだ推しが、燃え、それによって壊れていく主人公の生活は読んでいて苦しいものがあります。
家族や恋人ではなく、推しという一方的な関係性ならではの歪な結末が辛くも新鮮な気持ちにさせてくれます。

●最後に

芥川賞と聞くと読書初心者にはハードルが高く、読み進めるのが難しいのではと思っていましたが、テーマのおかげか文体のおかげかサラッと読むことができました。
推しのいる方はもちろん、推しってなんだ?という方にも新鮮な読書体験になるのではと思っております。ご興味ありましたら是非ご一読ください!