COLUMN

コラム

おすすめの本:夜は短し歩けよ乙女

第12回目のおすすめの本をご紹介していただくのはエンジニアのTAさんです(入社3年目)

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東京勤務・エンジニアのTAです。

もうすっかり冬ですね。
私が住んでいる地域ではこの時期、夕焼けチャイムが16時に流れるので、いよいよ日が短くなってきたなと感じる今日この頃です。

冬といえば、おでんですね。
私はお酒を飲むことが好きなので、寒さが続く日はおでんとおでんのだし割日本酒でまったりしています。日本酒好きな方はぜひ試してみてください。

さて、何をだらだらと酒の話を…と思われたでしょうか。
今回オススメする本として、好きな作家さんの小説にしようかとも思いましたが、パッと思い浮かぶものがなく…
皆さんにオススメできるくらい記憶に残っている本が、また何かと魅力的なお酒が登場する小説ばかりだったのです。
ですので、このコラムは呑兵衛の戯言程度にご覧いただければと思います。

夜は短し歩けよ乙女/森見登美彦

こちらの作品は知っている方も多いのではないでしょうか。
舞台化やアニメーション映画も制作されています。

内容(「BOOK」データベースより)

◆「黒髪の乙女」にひそかに想いを寄せる「先輩」は、夜の先斗町に、下鴨神社の古本市に、大学の学園祭に、彼女の姿を追い求めた。
けれど先輩の想いに気づかない彼女は、頻発する“偶然の出逢い”にも「奇遇ですねえ!」と言うばかり。
そんな2人を待ち受けるのは、個性溢れる曲者たちと珍事件の数々だった。
山本周五郎賞を受賞し、本屋大賞2位にも選ばれた、キュートでポップな恋愛ファンタジーの傑作。

オススメポイント

この小説は第一章~四章の構成です。
全体を通して、森見登美彦の独特な語り口調で、読んだ当初は読みづらさも感じました。
ですが、特筆すべきは森見さんの表現の幅です。
なかでも、第一章に出てくるお酒の表現が酒飲みには何ともグッとくる。

◆私は太平洋の海水がラムであればよいのにと思うほどラム酒を愛しております。

他にも…

◆カクテルを嗜んでゆくのは、綺麗な宝石を一つずつ選んでゆくようで、たいへん豪奢な気持ちになるのです。

上記はヒロインである「乙女」が夜の京都でお酒を求めて入店したバーでの一言です。
「乙女」はとにかくお酒が大好きで、しかも酒豪。とにかくいろんな種類のお酒が出てきます。
「乙女」がお酒を語るときの表現はとても美しく、心の底からお酒を愛する者からしか発せられない言い回しが、読んでいるこちらも幸せにしてくれます。

特にオススメ

私の一番お気に入りの箇所が、「偽電気ブラン」を初めて飲んだ「乙女」の感想です。

◆それはただ芳醇な香りを持った無味の飲み物と言うべき物です。
本来味と香りは根を同じくする物かと思っておりましたが、
このお酒に限ってはそうではないのです。
口に含むたびに花が咲き、それは何ら余計な味を残さずに
お腹の中へ滑ってゆき、小さな温かみに変わります。
それが実に可愛らしく、まるでお腹の中が花畑になっていくようなのです。

この小説の「偽電気ブラン」自体は架空のお酒ということですが、モデルとなった「電気ブラン」はもともと浅草の神谷バーで提供されていたブランデーベースのカクテルのことでした。(現在は販売されており、ネットなどで購入できます。)
ブランデーベースということで気づかれた方もいるかと思いますが、かなりアルコール度数の高いお酒です。
度数高めのお酒を飲んだときは、胸が熱く焼けるような感じがしますよね。
(いろんな解釈あるかと思いますが)それを「まるでお腹の中が花畑になっていくよう」と表現するところに森見さんの表現の豊かさを感じましたし、私も「乙女」と一緒に「電気ブラン」を飲んでみたい!と思ったのでした。

是非みなさんも、登場するお酒を片手に森見ワールドに没入してみてください。