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おすすめの本:史記

第8回のおすすめの本をご紹介いただくのは、以前作者ノススメというコラムを書いていただいたEHさんです!

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今回ご紹介するのは横山光輝「史記」です。

横山光輝といえば三国志の方が有名ですが、同じ中国の歴史シリーズの史記もおすすめです。

史記は司馬遷により書かれた中国の歴史書で、春秋、戦国時代、秦、前漢の時代を記しています。

史記には列伝といって人物にフォーカスして描かれていて、単なる歴史を記したものとは違って、
人物を中心に、どんな人がどんなことをして歴史が作られていったのか、生き生きとした歴史を知ることができます。
ある国で活躍した人物が、そこにたどり着くまで他の国を転々として苦労した話などがよくわかります。
人物によって、国が栄枯盛衰する様子が描かれており、まさに歴史は人が作っているということを感じられます。

好きなエピソードの一つに、後の始皇帝となる秦王政の暗殺を試みた、刺客荊軻の話があります。
燕国の太子丹が個人的な恨みから政の暗殺を企て、荊軻が刺客を引き受けることになります。
しかし秦王に近づくにはそれなりの手土産が必要となります。
そこで秦からの亡命者である樊於期将軍の首を手土産にしするよう太子丹に提示します。
丹は拒否しましたが、それでも荊軻が樊将軍に直接話をしに行くと、樊も秦王には恨みがあったため、自決して首を差し出しました。
手土産が用意できた荊軻でしたが、それでもすぐには出発しませんでした。
同行者を待っていたのですが、丹に急かされ、別の者を供に出発しました。
秦王への謁見を叶えた荊軻は予定通り暗殺を仕掛けますが、一撃を与えることはできず、返り討ちに会い、暗殺は失敗となります。

ここまでがエピソードなのですが、ここで思うのは、荊軻が待っていた同行者がたどり着いて、その人物と供に暗殺に向かっていたらということです。
連れて行った者は秦王の前で怖気づいてしまって何もできなかったのですが、待っていた方の人物であれば加勢してただろうという可能性があり、歴史が違っていたかもしれません。

このエピソードは失敗した話ですが、跡目争いに勝って政権を手に入れる話や、他国を亡ぼして領土拡大する話などいろいろな話があり、読み始めると止まらなくなります。
このおすすめを書こうと思って久々に読み返したのですが、ついつい一気読みしてしまいました。

また、史記では様々な故事成語の起源についても触れています。

「隗より始めよ」
大事業などの遠大な計画は手近なところから行うとよいという意味ですが、
燕国の昭王が国力増強のためどうすればいいか隗に尋ねたところ「まずは私を重用してください」と言ったそうで、
隗のような人物を重用する昭王ならば自分も重用してくれるに違いないと、世の優れた人物を集めたそうです。

「左遷」
秦国を亡ぼした後の論功行賞で、項羽は劉邦を警戒し、巴蜀の地(地図上で左)に遷したことから。

「四面楚歌」
劉邦と項羽の戦いの最後のシーンで、楚軍を追い込んだ漢軍は四方を囲み楚国の歌を歌いました。
すると追い詰められた楚軍は望郷の念を駆り立てられ、降伏者が多数出て楚軍の敗戦を決定づけました。

故事成語もそうですが、歴史から学べることも多くあると思います。

こんな「史記」ですが、残念ながらもう売られていません。
ブックオフに通って全巻集めました。皆さんもぜひブックオフに行ったら探してみてください。